忘れながら生きてる

観劇や読書の備忘録。基本ネタバレ全開。敬称略でごめんね。

feblaboプロデュース『ホテル・ミラクル2』

ホテルの一室を覗き見るような作品だったのに
性的に興奮したりエロスを感じたり官能的だったというよりは
人と人とがどうにかしてすり合わせながら繫がろうとする
本能のような恋愛がしたくなる劇後感。


米内山陽子脚本の「こうかん」は
悪い意味じゃなく女性の視点だなという作品で
どうしようもなく苦しくて、
面白いとこでは笑っちゃうのだけど
ずっと途中から涙がとめどなくあふれる状態で見ていました。
加藤隆浩演じる変態紳士がすばらしかった。
15minutes madeのMU『HNG』の流れがあったので
完全に変態という名の紳士というイメージがついてしまった役者さん。笑


1作品目が女性視点を丁寧に刺すように描いた作品なら
「砂と棒」は、あーこういう男いる…つまんないの…という
なんというかどうにも苦手な作風でした。
おっぱいぷる~んぷるん。


3作品目の「初恋は消耗品」がこれまたよかった。
あー、いるいるこういうオジサン、というラインをしっかりおさえながら
それでもどうにも魅力的な、なんなら抱かれたいとすら一瞬思わせる
橋本恵一郎演じるミュージシャン・木下と
まっすぐで危なっかしくて、軽やかなようで不器用な
加藤恵演じる女子高生の組み合わせが素晴らしい。
人間関係の繋がりがうまい事伏線にもなっていたりして
そういう意味での物語としての面白さもあってよかった。
MUは『少年は銃を抱く』『HNG(短編)』と3作品目だが
どれだけ幅広くカバーするのだ、ハセガワアユム。


そしてラストの「獣、あるいは、近付くのが早過ぎる」は
最後を締めくくるに相応しく
そしてある意味ラブホと男子、と聞いて
まっさきに思い浮かぶパッションを
見事に昇華してくれたように思える。
黒澤多生演じるケンジのいじらしさよ。
ヒロインポジションの青山祥子と並んだ時に
青山女史の小顔が際立つ組合せが素晴らしい。笑
ハイバネ服部氏のパワフルな脚本と
黒澤多生の若さあふれる(無論評価できるのはそこだけではないが)演技は
この企画に(そしてホテル物と聞いて期待されるものに)見事に合っていた。
余談だが、劇場の立地も相まって
窓の外に東●ビルのゴ●ラが容易に想像できた。笑


ラブホテルという密室は普段は覗き得ないものだが
そこでは日々、数多の物語が生まれ、人知れず消えているのだろう。
そんなことを考えながら帰る新宿のネオン街は
いつもと変わらず他人行儀で、それでいて人間味に溢れていた。