忘れながら生きてる

観劇や読書の備忘録。基本ネタバレ全開。敬称略でごめんね。

東京原子核クラブ (ハヤカワ演劇文庫 16)/マキノ ノゾミ

マキノノゾミ (1) 東京原子核クラブ (ハヤカワ演劇文庫 16)/マキノ ノゾミ
¥840
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マキノノゾミの優しい視線。
この人の作品が愛される理由がわかった気がする。


日常を丁寧に切り取ることが、時に"異常"への痛烈なアンチテーゼとなる。
喜びや安らぎを描くことで、強烈に浮かび上がる悲しみや怒りがある。
だけどそこにあるのはただただ、人間を想う優しい目。
好きだなぁ。


題材的には、こないだ(つっても結構前か)観た
劇団バッコスの祭りの『センの風とムラサキの陽』を思い出した。
結局、日本人にとって原子力ってのは
永遠に向き合っていかなきゃいけないテーマなんだと思う。
このタイミングで言うのもあれですが。


この本が読み物として何より面白かったのは演出ノート。本当に勉強になる。
私はきっとまだ「ここを立てすぎたら台無し」「嫌味が全面にでないように」というところで
立てすぎたり、嫌味になってしまうんだろうな、と読みながら思った。


この本で一番面白かったのは実は演出ノート。
作者の意図や魂胆をこうやって平行して読めるのは本当に勉強になるし
マキノさんの音響や早替えに求めるリアリティと
それにスタッフがどう応えたかという話も興味深かった。


たぶんまた何度か読み直すんだろうな。
しかし初演キャストで映像が残ってないものか。超観たい。