忘れながら生きてる

観劇や読書の備忘録。基本ネタバレ全開。敬称略でごめんね。

こゆび侍『うつくしい世界』

「うつくしい世界」ということは
きっと美しくない世界を描くのだろうと
まずタイトルを聞いたときにそう感じて、
その予測はなかなかに的を射ていたが、
しかし結局最後には美しい世界を想わせてもらった。

ファンタジーを描く責任、というのに真摯だなぁと感じながら観ていた。
世界観がしっかりしており、何を見せて
何を見せる必要がないかをしっかり理解している。
なので入り込みやすく、集中して観ることができた。
当日パンフは導入として優れた解説だったし
世界観・世界の仕組みを歌にするというのも、イカした発想である。
あと登場人物のネーミングセンスがいい。
どこの国っぽくもなく、それでいて日本語の中で聞いても浮かない名前。イイネ。

ピコがニカロに愛ある言葉をかけた
その瞬間の暗転、で物語が終わるかと思った。
それも物語の方法としてはアリで、クライマックスであったワケだから
「その先」を続けて飽きさせず、さらに大きな波をかぶせてきたのはすごいと思う。
ついでに言うと、先にニカロが膨らむ演出を
照明の当たりが大きくなり暗転、と見せていたことで
「おー風船人間上手く処理したなー」と思わされてしまったので
その後さらに本当にニカロが膨らんだ時の驚きと感動はひとしおであった。
さすがNichecraft辻本氏。

帽子を衣装に取り入れる、ことは小劇場において
なかなか難しい印象が勝手にあったのだが
テンガロンハットを見事にかぶりこなした
ドッコ役永山智啓はさすが。
本当にアニメやファンタジーにいるような
テンプレをいい意味で突っ走る
小憎らしいキャラクターであった。

そしてヤドーナ佐藤みゆき。さすがである。
美人さんなのに…美人さんだから…
だからカッコいいのである。
私の美学にズギュンときた。暗転前の表情が秀逸。

バラ探しの中の褒めましょう合戦がなかなか面白く
ズンティ廣瀬友美の凛とした返しにはヒジョーにしびれた。

美しいもの、綺麗なものをもてはやし
盲目によしとし、それを強いられるというのは
何かへの批判のようで、まぁいわゆる
ヤシマ作戦」的な何かだとか
スラックティビズム的なものへの皮肉かなーとか考えもしましたが
まぁそーいう難しいことは観てる間はあまり考えず、ひたすら
「大っ嫌いなんだから!」にキュンとし
「好きだ!好きだ!」に号泣させていただきました。
幸せになってよかったなー。
ちゃんと客が何を観たいかわかってる。(笑)

うーん、二時間の芝居の感想を頭から全て述べようと思うと
うっかり三倍は時間を要してしまうけど
そこまでするつもりはないので(笑)そろそろ切り上げます。
やー、とにかくよかった。満足感。

最後になってしまいましたが、主役の浅野千鶴が本当によかった。
純な子供の視点でずっと世界を見つめている
その感じがすごく素敵。
子供役の作り方、について考えさせられた。
妹ウピ役の小石川祐子も好演。

あー、物販の絵本も素敵だったなぁ。
お金なかったから眺めただけでしたが。
タイトルは前情報で知ってたけど、
まさか本当にのどぼとけを盗む話だったとは。(笑)
その発想は、すごいと思う。
そしてその発想は、好きだ。

…すごくピュアなアベサダ?(笑)

動物電気『タッパー!〜男の器〜』

非常に笑わせていただきました。
芝居観て笑いすぎて声枯れたとか、なかなかない経験。
最前列桟敷席で見ていましたので、もう飛び散る汗が!

冒頭、身体を張った「本編とは何の関係も無いコント」からはじまり
全体的に身体を張った、意味の無い、コメディチックな感じでした。
好きな人は大好きだけど嫌いな人は嫌いなんだろうなぁ。(笑)
犬と串で笑える人はたぶん好きだと思う。もっと無意味な感じだけど。

帯金ゆかりが美しかった。
あれだけの濃い男性陣相手に渡り合っていく
強いおかみさんの役が見事にハマっていた。
あとヨシケンさんの佇まいが個人的にものすごく好き。

下北沢駅前小劇場
★★★★☆

『ポスターを貼って生きてきた』

演劇関係で手に取った一冊。
時間が無くて途中までしか読めなかったが非常に面白かった。
演劇と生活を結びつけることを考えていた後輩に薦めようと思う。
結局、足なんだよなぁ。
いくらネットが発達しても、人と人とを繋げるものは、リアル世界にしかない。